保育の現在と未来を創造するための問題提起

 テクノロジーの進化により世界は著しい変化をし続けています。私たちの生活そのものも予想できない変化をしている現代、皆さんの保育観は、今どんなものでしょうか? 

 「環境による保育」と言いながら、私たち保育者は子どもを取り巻く環境の変化をどう見据えて、子どもに必要な援助・教育をどのように考えているでしょうか?

  私たちは、こうした時代に子どもたちが生きる、ということを見据えた保育の在り方、未来を考え、ビジョンをもった保育実践を研究していくこと、そしてDoing!  

 保育を展開する実践者として、学び合い、意見交換し、互いの気づきを体現しながら保育の現在と未来を創造していこうと思います。

 ここ10年を振り返りながら考えると、日本の子育て環境も大きく変化していると感じています。

 保育園に通う子どもたちの家族構成を見ても、ひと昔前の大家族(両親、祖父母、2,3人の子どもなどの構成員)は少数で、家庭そのものは核家族であることが主流です。

 それだけでなく、昭和以降、社会改造が進む中で、地域社会、町、村という共同体的社会の中で「地域で子育てをする」という、「うちの子も、よその子も同じように」という意識はかなり退化?し、むしろ個々人はコミュニテイを生活している地域に求めているか?という、社会、地域での子育て論は空洞化している現状も見えます。

だとすると私たち保育者も、今までのような社会的理解の範囲を、そのまま子どもの発達(育ち)の保障、保護者への子育て支援としていくのでは何か現実にそぐわない、ピントがずれたものになってしまうかもしれないのではないでしょうか。
 良さ、悪さ、課題は再検討されながら、今こそ「保育」「子育て」とは?を考えるべき時代にさしかかっているように思います。

 幼児教育と言われるものもしかり、です。賛否はありながらも現代社会の中で現実に行われている社会的子育てとは「経済的な教育投資」という意識にあふれていて、そこに「どのような子育て」「どのような子どもへの必要性」ということは議論され評価されることが薄いまま、一部がスピーデイに進んでいくばかり・・という局面にあると言えるでしょう。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大という、予想もできなかった(いや、想像力を広げて予想しようともしていなかった・・というのが正しいのかも。)世界的パンデミックが起き、さらに社会全体のしくみがシフトを変えようとしている中で、私たちが固まった頭で単純に従来通りの保育をすることで逆に何を目指すのか?という疑問符でもあります。

 人間の発達権利の保障という点では、これまで目的にかかげてきた「共感性を育み、一人ひとりのより良い発達に向けて」という理念は変わりません。

 しかし、共感性に通じる「人とのつながり」ということ、つながり方をどう捉えていくのかという問いを前提に、その上で子どもがどのように育つことが願われ、子ども自身が主体的に自分を育てようとする環境づくりを保育者の私たちはどんなものだと考えるのか?

 乳幼児期という時期に改めて必要とされるかかわりや援助とは?という普遍性を確かめることも含めて、あらゆる角度から考え、検討し、実践に置き換え、また再検討することによって、新時代の幼児教育、保育を構築していく役に立っていけることを願っています。

 多くの人の参加により、保育の役割や専門性、個々の課題など考え合い、実践として紹介し合える機会にしたいと思います。

保育研究会DOING